10月, 2025年

【10月27日(月)木村晋也 先生】第17回柴三郎プログラムセミナーを開催します!

2025-10-02

日程:令和7年10月27日(月)17:00~18:30 (16:30開場)
場所:医学教育図書棟3階 第2講義室
講師:木村 晋也 先生
(佐賀大学医学部内科学講座 血液・呼吸器・腫瘍内科  教授)
座長:岡田 誠治 先生
(熊本大学 造血・腫瘍制御学講座 教授)
本学の学生・教職員の方はどなたでもご参加いただけます。
※事前のお申し込みは不要です。


「慢性骨髄性白血病患者、全員の完治を目指して:育薬と創薬」
〈要旨〉
慢性骨髄性白血病(CML)はとてもユニークな血液の「がん」です。多くのがんは複数の遺伝子異常が積み重なって発症しますが、CMLは9番と22番の染色体が入れ替わって生じる BCR::ABL1 遺伝子 ただ1つが原因で起こります。「敵は、ただ一つ」です。この異常遺伝子から始まる「細胞よ、増えろ!」という命令(シグナル伝達)を止めればCMLは克服できるのではないかと考え、世界中で研究が始まりました。  

私もまず、がん遺伝子からできるメッセンジャーRNAを止める核酸医薬を作りましたが (Cancer Res 1995)、残念ながら患者さんへの応用は難しいと分かりました。その後、造血幹細胞研究のため留学し、血小板を育てる「トロンボポエチン」が造血幹細胞にも重要であることを発見しました (PNAS 1996)。一方その頃、CMLに画期的な薬が登場しました。それがABLチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) イマチニブ です。BCR::ABL 蛋白の働きをピンポイントで止めるこの薬は劇的な効果を示しました。私はドイツでイマチニブの臨床試験に参加し、その効果と同時に耐性の問題も学びました。帰国後は耐性を克服する研究を進め、併用療法 (Blood 2003)や第2世代TKI バフェチニブ(Blood 2005, 2007) などの開発に携わりました。

さらに佐賀大学で教授となってからは臨床試験を主導し、第2世代TKIダサチニブで「治療薬を中止しても再発しない患者が一定数いる」ことを証明しました。また高齢者では少量でも十分に効くことを示し、身体的・経済的な負担軽減につなげました (Lancet Haematol 2015, 2020, 2021)。しかしTKIだけでは治らない患者もいます。そこで我々はDNAメチル化を阻害する新薬 OR-2100 を開発しました (Blood 2020, Leukemia 2024)。現在は骨髄異形成症候群で治験中ですが、CML幹細胞を根絶する可能性も見出しています。

これまでの研究は「薬を創ること(創薬)」と「臨床で育てること(育薬)」の両方を大切にしてきました。最終的にCML患者さんを100%治すことを目標に、挑戦を続けています。
ポスター(印刷用)はこちらから

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